ロシアのウクライナ侵攻に中国漁夫の利

産経からまた興味ある掲載記事を見つけた。

宮家邦彦さんの掲載記事を紹介します。

 

この方は外務省出身で、現在は内閣官房参与を務めていて

キャノングローバル戦略研究所研究主幹もなさっている。

メンバーもかなりいて、中々興味のある、論説・論文を

読めますよ。HPも用意されています。

 

ロシアのウクライナ侵攻が長引けば長引くほど、中国に利すると

宮家さんは言っている。

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宮家邦彦さん

 

アメリカが2001年9・11同時多発テロ直後に当時のブッシュが

中国に対する政策転換が中国を大きくしたことを

更に、バイデンもするのではないかと心配している。

結びの言葉としてウクライナや欧州での政治・軍事的混乱が長引けば

長引くほど、中国は利する。

日米豪は2001年の過ちを決して繰り返してはならないのである。

と締めくくっています。

 

ロシアの侵攻、中国の高笑い

 

英語にデジャヴュという言葉がある。フランス語で既視感、すなわち

「初めてなのに昔同様の体験をしたかのような感覚を持つこと」を意味する。

ウクライナ危機で筆者が抱いた感覚も限りなくそれに近いものだった。

 

今回米政府は侵攻回避に向けロシアを説得するよう中国に再三要請した。

中国側はこれに応じなかったが、危機の平和的解決を求め、

ロシアの軍事侵攻を完全には支持していない。

一部には中国が「漁夫の利」外交を展開していると見る向きもある。

これが何故(なにゆえ)「デジャヴュ」なのか。以下は筆者の見立てだ。

 

プーチンの戦略的誤算

露大統領が判断ミスした理由には諸説ある。

プーチン氏個人の驕(おご)り、怒り、老化などでウクライナ

NATO北大西洋条約機構)の意図を過小評価した結果だというのだ。

加えて筆者は、プーチン氏がロシアの戦略的な利益よりも、ソ連時代の

ロシア民族主義イデオロギーを最優先させた結果だと考える。

その意味で今回のロシア側誤算は戦略的失敗であり、その悪影響は

今後も長く続くはずだ。

 

停戦交渉はどうなる

停戦は「劣勢にある」当事者が求めるものだが、最大の問題は

プーチン氏自身が自らの戦略的失敗に気付いていないことだ。

ウクライナが降伏することはなく、ロシアも今後の軍事攻勢で勝利を

確信している。されば停戦交渉が進展する可能性は低いだろう。

 

米・NATO軍の直接軍事介入はないだろうが、逆に言えば、

米国は前例なき経済制裁に加え、機密情報提供から

最新対戦車・防空兵器の供与・訓練まで、「直接介入」に至らない

あらゆる手段を用いてウクライナを支援するに違いない。

戦闘が長期化・ゲリラ的市街戦化すればロシアの劣勢は免れないだろう。

 

中露は戦術的パートナー

2月4日の北京冬季五輪開会式前、中国の習近平国家主席

「軍事侵攻を遅らせる」ようプーチン氏に求めたと報じられた。

それが事実であれば、これほどパラリンピックを冒瀆(ぼうとく)する

行為はない。ウクライナ侵攻が五輪後となる一方、パラは侵攻最中の

開催となっているからだ。

 

中国はロシアに「五輪開催中の侵攻は避けよ」ではなく、

「侵攻自体をやめよ」と求めるべきだった。

されど、習氏の関心は五輪を成功させ、5年に1度の中国共産党大会の年に

政権「3期目」を確実にすることしかなかったのである。

中国にとって主要な敵はあくまで米国だ。

米国の関心が対中抑止にシフトする中、ロシアが欧州で

米国を牽制(けんせい)すること自体、決して悪い話ではない。

他方、ウイグルチベット問題を抱える中国が「ジェノサイドを理由に

他国の内政に軍事介入する」ロシアを支持することは自己矛盾となる。

されば、中国は「ウクライナ危機」を最大限政治的に利用して平和的解決に

向けロシアに強く働きかける姿勢を示しつつ、「中国はロシアとは

違う」とばかり、米中協力復活の可能性を強(したた)かに模索する可能性が

最も高いだろう。

 

2001年の既視感

ん、待てよ。

これって、前にもどこかで見たような気がする。そうだ、あれは2001年の

9・11米中枢同時テロ発生直後のことだった。

 

当時、米国のブッシュ(子)政権は対中懸念を深めていたが、あの事件から

米中関係は「対立」から「協力」に舵(かじ)が切られ、その後20年間に

中国は米国に追い付いた。

 

今回のウクライナ危機で、米国が再び対中懸念を棚上げし、

対中協力を志向する外交に追い込まれる恐れはないだろうか。

 

ウクライナや欧州での政治・軍事的混乱が長引けば長引くほど、

中国の高笑いは止まらないだろう。

日米豪は2001年の過ちを決して繰り返してはならないのである。

 

 

ありがとうございます。